自然な剪定とは?
庭木の手入れについて、詳しく説明がなされる機会が少なく、お庭の剪定といってもどのような切り方をするのか、どういった違いがあるのか、というところまで一般の方に伝わっていないと思います。
これまで和庭で多く使われてきた樹木は、植木職人によって枝ぶりが美しくなるよう手間をかけて育てられた観賞価値の高い仕立て物と呼ばれるものでした。
松の手入れは手間がかかるから高い、というのは聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
松だけでなくそれぞれの樹木に応じた切り方があり、美しいお庭を維持していくには長い年月をかけて培われた技術や知識が必要になります。そのように丁寧に手入れをされた日本庭園には、唯一無二の美しさがあると思います。
ですが、住宅のデザインも時代とともにさまざまに変遷し、そこに植えられている樹木、お庭の在り方もかなり様変わりしています。それまで使われていた仕立物の樹木ではなく、雑木の庭と呼ばれるお庭が作られたり、オリーブやアカシアのような洋木もさかんに植えられるようになりました。
そうした樹木は自然な姿で伸びることをイメージして植えられています。
ですので、そのようなお庭の管理には、自然樹形を意識した剪定がとても大事だと考えています。
都市部の住環境に合わせ、目隠しなども考慮しながら、切った直後だけではなく、そこから伸びた姿が自然で美しく見えるように剪定をします。
常に新しく伸びた枝に切り替えることで、大きくなりすぎることがなく、毎年理想の高さを維持していくことができます。
刈込剪定をしない?
刈込み剪定とは言葉通り、樹木の表面を均一に切りそろえる剪定方法です。
刈込みばさみやヘッジトリマーと呼ばれる機械を使い、玉物などと呼ばれるサツキやツゲをまん丸に刈り込んだり、目隠しの生垣を四角形に整えるような剪定方法です。
狙いがあればよいのですが、刈込み剪定にはデメリットもあります。
表面しか切らないので、光のあたらない中の方の枝が枯れてしまい、新しい枝に交換して新陳代謝を促すことができない。
よほどこまめに刈り込んでいないと、すこしずつ大きくなってしまう。
玉物や生垣以外でも、毎年同じところで切りそろえられていると、その部分はこぶ状になり、幹も次第に太くなって、柔らかく自然な樹形は失われてしまいます。
フルヤガーデンでは枝の先端をそろえるのではなく、良い枝と不要な枝を見きわめて、枝数を減らすことで、樹冠の内側にまで光を届けます。
また、すべての枝の先端を切ると木は傷みやすくなり、切り口から複数の枝が伸びるので伸びた後が美しくなりません。
全体のシルエットは整えつつも、若く柔らかく伸びた枝葉をそのまま残すことで、自然な樹形を維持したまま成長してくれます。
フルヤガーデンでは玉物、生垣、コニファーなどについても透かし剪定をご提案していますが、費用がかかってしまいますので、必ずしも必要でない場合にのみ、刈込剪定で作業させていただいています。
樹形を「直す」から「維持する」手入れへ
フルヤガーデンを初めて利用してくださる方の樹木は多くの場合、太い幹がくねくねと形を乱していたり、枝と枝が混みあって密になっていたりします。
これまで枝先をそろえるだけの刈込剪定をされていた場合には、特にそのようになっていることが多いです。
そうした場合には、まず「樹形を作る」剪定から始めさせていただきます。
時期や目隠しになっているなどいろいろな要因でいきなり大手術が難しい場合もありますが、まずは理想的な樹形をめざして必要であれば大きな幹も剪定していきます。
その作業を行いながら、透かし剪定で木の内側に光を届け、良いところから伸びてきた枝を新しい幹にするために育てます。
こうして理想的な高さとそよそよと心地の良い樹形を長く「維持する手入れ」へと次第に切り替えていきます。
樹種の特徴を知り、経験から学びながら、剪定技術を高めています。